長野市上松、山上家の室礼
3月「上巳の節句」お雛さまのお目覚め
長野市上松の母屋で「お内裏さま」が一年の眠りから目覚め、箱より取り出されます。結婚と共に私と高知より長野に輿入れした真太郎作の木目込み人形は母からの贈り物。
庭の梅がほころび始めた長野は日が差したり、寒くなったりとまだ三寒四温。母屋は天井が高く、客間はいつも寒くて、雑巾がけには少々辛い。しかし、拭き清められた客間は青々として気持ちよい。室礼の基本は清められた空間です。
今回の室礼は、客間の床の間にお内裏さま、左側の棚に金糸の「貝合わせ」の帯を掛け、その上にはお多福のお面を配する。帯の両側には左に牛の置物、右に馬の置物。
どちらも私より古くからこの家に伝わる青銅の置物。右の馬を娘の結婚相手に見立て、早く来て欲しい親の願いを込める。左の牛はその結婚が我慢強く長くあれと祈る親心。
いつまでも手放したくない思いと、幸せになって欲しい矛盾した親心に、ふと笑みがこみ上げる。その下の引き戸の前に、おめでたい赤絵の伊万里の皿を配し、この家の円満を願う。その前には、これも長きにこの家にある打ち出の小槌を置いて福を呼び込む。「お多福」と「打出の小槌」日本人はどこまでも福が大好きな民族です。
「福重ねの室礼」です。
そして、「お膳」を使って、鯉が二匹描かれた徳利と同じ絵付けの皿で、どちらもお内裏さまに見立てます。徳利は男雛、皿を女雛に見立てます。一対になった器なら、ちょっとした空間にしつらえられます。
この鯉二匹の徳利と皿は、高知の帰った折、高知城下の骨董屋で買い求めたもの。朱赤の鯉と黒い鯉が水に戯れている姿が気に入り購入。代々伝わったものを上手に生かしながら、それに自分の感性に響いたものを見つけ、融合してみるのも楽しいものです。
旅をする都度にその地方の民芸やその国の思い出に室礼のお道具を探す楽しみは格別です。その出会いが、見極める目を養っていくのです。
長野では4月3日までお雛様を出しておきます。次回はお雛さまにまつわるお話し様々取り上げます。
お内裏さまに代わるお道具の見立ての数々も登場!時代の多様化は室礼にもあるのです。お楽しみに!
【室礼(しつらい)とは、3つの調和で成り立つ】
1)いつ?季節(二十四節気)
2)どこで?(家、仕事場)
3)何を誰のために祈るか?(自分の家族、友人、お客様)
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