最近流行りの「おもてなし」ですが、この意味を知って使っているかは疑問です。何だかホテルのサービスと勘違いされているようなので、室礼との関係をいう前に、まずは「おもてなし」の意味を認識してみましょう。
「おもてなし」を検索すると、
語源より
⑴ 「もてなし」の丁寧語、
その語源は「物事を持って成し遂げる」の意
⑵ 「表裏無し」その語源は「表裏のない心でお客様を迎える」の意
この二つが「おもてなし」の語源とされている。
ではその要約は
お客様に対する、「表裏のない心で対応する心遣い」を指します。
誠心誠意な姿勢は、見返りを期待(チップ)するものではなく、目に見えない思い、「精神性」をいうのです。
どんな状態にも対処できるプロの対応ともいえます。お客様への想定外の「心遣い」で、現在世界に認識され、広がっています。
ではその精神性が「室礼」とどういう関係にあるのでしょう?
室礼の基本は、招く方への誠心誠意の思いを空間に創生します。
季節の野菜、果物を盛るのは収穫の喜びを神に感謝し、分かち合い、その季節を共に過ごすこと。
室礼の元は「神をもてなす」ことに始まる「儀礼文化」です。「おもてなし」の起源なのです。
「お客様は神様です!」この言葉はもてなす側の意識がいわせたものです。ただし、過ぎたるは?何事も過剰になるのでご用心!
室礼では、まずはその場所(床の間)を清浄に掃除をし、それから皿や花器、旬の果物や野菜を水で浄めます。その道具や果物の意味を言葉に託し、変換したり、お客様の多幸を祈り、しつらえます。
たとえば、「桃」は日本神話では「魔除け」とされているので、これから旅立つ方への心遣いにしつらえ、「梨」は「無しに通ずるので「有りの実」と言い換えたりします。
お正月に茄子の形の菓子や陶器の物をしつらえ、「今年の祈願が「成す」ようにと思いを掛けるのです。家族やお客様への思いをそのままに花を活け、しつらえる心遣いの空間なのです。
室礼には一年の節目、季節の節目、人生の節目にその行事やお祭りを通して祝い、しつらえます。利休のお茶の精神にも通じ、二十四節気、七十二候と日本人の伝承は今でも脈々と繋がっています。
ここに日本文化の精神性が伝承され、「おもてなしの文化」が生まれたのです。
「室礼」と「おもてなし」との関係は」「卵が先か?鶏が先か?」ではなく日本人の見えない心の文化が今に続いているということです。
本当の意味を知らずに、「おもてなし」が一人歩きしている昨今、「室礼」で自国の文化を学んで頂きたいと心より願います。
本物の「おもてなし」の心は世界に広がっています。外国のスポーツ選手が控え室を清掃したり、今回の台風の被災地でボランティア活動しているのをみると感じ入ります。
足元を見れば、そこにある自国の文化こそ私たちの財産だと気づくでしょう。素晴らしい財産は、世界で分かち合えれば素敵です。
【室礼(しつらい)とは、3つの調和で成り立つ」
1)いつ?季節(二十四節季)
2)どこで?(家、仕事場)
3)何を誰のために祈るか?(自分の家族、友人、お客様)
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