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山上 絹代

【コラム】霜降の室礼


 10月23日は二十四節気の霜降(そうこう)。

 七十二候でも「霜始降花」(霜降り始める)山里では霜によって草木や作物が枯れないよう警戒する時期です。

 霜は冷気で地面が白くなる状態。また、この頃は楓や蔦の紅葉が色鮮やかに秋の山を彩ります。これを「山装う」(やまよそおう)といい、日本の秋が深まる様子の代表的な言の葉です。

 日本の二十四節気は、自然に寄り添い暮らした我ら先祖たちの知恵ある遺産です。

その知恵を空間に生かし、茶の湯の文化に昇華したのが、利休の茶道です。

 室礼にも利休居士(りきゅうこじ)の精神性が受け継がれています。「利休七則」にある「夏は涼しく、冬は暖かく」は当たり前のことのようですが、空間演出に於いても基本となります。

 「花は野にある様に生け」というのも本質を追求する深い意味があります。お茶の世界は室礼に於いても同様に、自然に逆らわず、自然に寄り添う暮らしの文化はすなわち、「日々是好日」(にちにちこれこうじつ)。

*この意味は下記の映画の中にその意味を示す言葉が出てきます。探してみましょう。

 そこで今回は、今月公開中の映画をご紹介いたします。

「日々是好日」は、つい最近お亡くなりになった樹木希林さんの出演されていた映画。

この茶道の精神が見事に淡々と描かれています。静かに繰り返される1年12ヶ月と繰り返されながら、日々会得するものの関係が見事に映像化されています。

お茶に興味がある方、そうでない方にもこの映画は、お薦めです。

 二十四節気を通して、掛け軸や本物のお茶道具が見られ、室礼を学べます。

 今回の「霜降の室礼」は、お道具に山々の絵柄の帯と赤い襦袢、花が咲き誇る着物を配し、「山装う」という言の葉をテーマにしました。

 手前に陶器の水盤をひっくり返し、山に見立てます。その上に水晶の原石を乗せ、霜が降りた様を表しました。

 朝方に山々や里にキラキラ光る結晶を見せてくれる「霜」を水晶の原石で見立てました。この原石は、表は地味な岩ですが、割った中には美しく繊細な光り輝く水晶の結晶です。

 (何万年かかって結晶化)この室礼はお亡くなりになった樹木希林さんへのオマージュとしました。この水晶の原石こそ、希林さんのような気がします。古い着物がお好きだった方なだけに、「山装う」で帯や着物を使ったのも後で気がつき、納得できました。

 人を「偲ぶ」(しのぶ)とはこういうことなのでしょう。人生の最後に原石が割れ、花を咲かせ、水晶のように伝説になったのです。素敵な人生のあり方に合掌。

【室礼(しつらい)とは、3つの調和で成り立つ】

1)いつ?季節(二十四節季)

2)どこで?(家、仕事場)

3)何を誰のために祈るか?(自分の家族、友人、お客様)

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